ベネズエラでクーデター!インフレに端を発した難民続出で混乱はいつまで続くのか?

時事

反大統領派のクーデター

経緯

4月30日、ニコラス・マドゥロ大統領に対し、フアン・グアイド国会議長が首都カラカスの空軍基地にて、兵士らに決起するよう呼びかけました。グアイド国会議長は1月に暫定大統領就任を宣言しており、マドゥロ大統領とは数か月に渡って対立しており、野党指導者レオポルド・ロペスと共に反マドゥロの狼煙を上げました。

グアイド国会議長は反マドゥロ派の軍人を率い、催涙ガスなどで鎮圧にあたるマドゥロ政権側と衝突。ベネズエラ各地で衝突が起こりますが、同調する軍人は少なくマドゥロ政権打倒は失敗に終わります。この混乱により、望みを失った国民が出国を求め、国境沿いのブラジル北部パカライマに1日数百人単位で押し寄せる事態となりました。

理由

2013年、チャベス前大統領の死を受け継承する形で就任したマドゥロ大統領。国際的な原油価格の低下と価格統制の失敗によりインフレを悪化させたにも関わらず、事実上の一党独裁体制を敷き政権を維持。以来、反政府デモとそれに対する鎮圧が頻発する中、死者が出るなど混乱状態にありました。

そんな中、アメリカからの支援を受けるグアイド国会議長が暫定大統領就任を宣言。日本や西側諸国をはじめとする50カ国以上からベネズエラの暫定大統領として認められ、国内はふたつの権力が対立する状況に。グアイド国会議長が反マドゥロの気勢を揚げつつ今回の決起に至ったわけです。

現在

グアイド国会議長によるクーデターは失敗に終わりました。軍を完全に掌握したわけではなく、大多数の軍を手の内に収めるマドゥロ大統領側に軍配が上がりました。しかしながら、アメリカをはじめ、グアイド国会議長は暫定大統領として承認している国は多く、中国、ロシアが推すマドゥロ派との混乱は続きそうです。

ベネズエラが抱える問題

かつては石油で裕福

ベネズエラは世界一の原油埋蔵量を誇るOPEC原加盟国。サウジアラビア、イラン、イラク、クウェートに連なる南米唯一の原加盟国ということで、当然のことながら南米で最も裕福な国でした。しかし、富裕層と貧困層の格差は大きく、貧困層から支持を得たチャベス大統領が反米左派路線を敷いたため、西側諸国が投資を控えます。

特にアメリカからの制裁が響き、原油を精製する石油製品を輸入できなくなり、原油生産量が激減。石油の他に目立った産業の乏しいベネズエラにとって経済的打撃は計り知れず、チャベス、マドゥロと続く政権がますます左傾化していくという負のスパイラルに陥っていったのです。

ハイパーインフレ

1990年代まで、中南米では最も安定して生活水準の高い国だったベネズエラ。原油価格が高騰を続けていた間、チャベス前大統領が国営石油会社の権益拡大のため、エクソンモービルやシェブロンなどの国際石油会社の接収を強行。また、貧困層の生活支援として農産物には固定価格の販売が強制されました。

そんな中、2014年に石油価格が下落。半値以下にまで落ち込み、前述の価格統制により生活物資の産業分野から撤退ことなどが相まって、国内での需給の極端なギャップから凄まじいインフレが発生し、通過ボリバルは大幅に下落しました。物価は2016年に約300%、2017年には約1130%も上昇。100円で買えていた物が、翌年には3300円になった計算です。

政情不安で難民発生

制御不能のハイパーインフレ、そして高い失業率により、国民が国外へと脱出するという事態に。政情不安、食料や医薬品、生活用品も拍車を掛け、2018年には毎日5000人ものベネズエラ人が、隣国のコロンビアを中心に出国。コロンビアは130万人もの難民を受け入れたそうです。

2019年6月現在では、ベネズエラから脱出した難民と国外移住者が400万人に達したとのこと。解消の気配のないインフレだけでなく、グアイド国会議長のクーデター失敗でマドゥロ大統領を打倒できなかった失望感も背景にあるようです。

ベネズエラとは

歴史

スペイン人入植者によって国としての形が作られ、ミランダ、シモン・ボリバルらに導かれ、1811年にベネズエラ共和国として独立。一時期、コロンビアの一部となりますが、1830年に分離、20世紀初めに石油が産出し、南米一豊かな国となります。アメリカ資本の進出と共にアメリカに追従する政権が続きました。

1973年の石油危機を機に石油産業国有化に踏み切ったことで、国営石油会社が利益を独占したため貧富の格差が拡大。親米政権による経済政策に不満を抱いた民衆が暴動を起こすなど、国内情勢は不安定に。そんな中、1999年、反米左派のウーゴ・チャベスが大統領に就任すると、社会主義路線へと舵を取りました。

チャベスからマドゥロへ

カリスマ的な人気と豊かな石油収入をバックにしたチャベス大統領は、貧困層への教育や医療、住宅の無償化といった大衆迎合的なバラマキ政策を推進。また、エクソンモービルやシェブロンなどの国際石油会社の接収を強行するなど、外国資本の排除というナショナリズムに訴えた国家運営を進めます。

そんなチャベス大統領は2013年3月にガンで死去。翌月の選挙で当然したマドゥロ大統領は、社会主義的な前政権をそのまま引き継ぎました。元バス運転手というマドゥロ大統領に国難を乗り切れるだけの政策やカリスマもなく、折しも原油価格の暴落という惨事も加わって迷走。そして、グアイド国会議長が反旗を翻し、今回のクーデター発生となりました。

各国の反応

南米

ベネズエラの混乱で発生した難民は、コロンビア、ペルー、チリ、エクアドル、ブラジルなど近隣の南米、カリブ諸国が受け入れています。グアイドが暫定大統領に就任した際、ウルグアイとボリビアを除くほとんどの南米諸国が承認したことから、南米はほぼ反マドゥロと言っていいでしょう。

アメリカ

南米で強い影響力を保持しているアメリカは、中でも世界有数の産油国であるベネズエラには石油産業に大規模な資本を投下していました。しかし、反米左派を掲げるチャベス大統領の時代から関係は険悪化。マドゥロ大統領になっても変わらず、トランプ大統領もグアイド国会議長の暫定大統領就任を支持するなど、緊張が深まっています。

日本

日本とベネズエラの関係は、石油がひとつの軸になって貿易関係を継続してきました。移民の絶対数が少ないこともあり日系人はそれほど多くなく、また日本企業の駐在員や日本人学校の関係者のほとんどは国外に避難したとのことです。

今後の見通し

かつては豊富な石油資源のおかげで南米一の豊かさを誇ったベネズエラ。しかし、ハイパーインフレに加え政情不安により、国が混乱をきたし始めると、3000万ほどの人口のうち、その1割を超える約400万人が国外流出という未曾有の事態を引き起こしました。

反米を掲げるマドゥロ大統領打倒を志したグアイド国会議長(暫定大統領)のクーデターが失敗に終わり、民衆の間で終末感漂う事態に。今後、マドゥロ大統領が打開策を打ち出すのか、それとも強気のまま事態を乗り切ろうとするのか。はたまた、グアイド国会議長が起死回生の策に出るのでしょうか。