ゴーン会長逮捕!ゴーン体制後の日産、そしてルノーとの関係はどうなる?

時事

金融商品取引法違反の容疑で逮捕

経緯

2018年11月19日、カルロス・ゴーン日産自動車前会長が逮捕されたというニュースが日本列島を震撼させました。容疑は、役員報酬額を実際より少なく記載したという有価証券報告書への虚偽記載。1億円以上の役員報酬は個別開示することが義務付けられていますが、容疑が事実ならゴーン前会長は巨額の報酬を隠蔽していたことに。その額、50億円とも言われています。

東京地検特捜部は、偽った報酬が数年度にわたり高額であることから、悪質性が高いと判断しゴーン前会長を逮捕。日産自動車は、22日の取締役会議でゴーン前会長を会長職から解任すると発表しました。多国籍企業のトップということもあり、外交問題に発展する可能性も取り沙汰されました。

身柄拘束から保釈へ

翌月、ゴーン前会長は金融商品取引法違反の疑いで再逮捕されると、会社法違反(特別背任罪)でも再逮捕。ゴーン前会長は東京拘置所に拘留され、2019年3月6日に保釈されました。保釈保証金は10億円で、その内訳は、金融商品取引法違反の件で2億円、特別背任で8億。ゴーン前会長は、未開示の報酬を受け取ったことはないと一貫して主張していました。

保釈後も係争中

4月4日、日産の資金(5億円強)をオマーンの販売代理店に送金させ、自らに還流させた疑いで、特別背任の疑いで4度目の逮捕。オマーンの代理店には2012年以降、日産の積立金から計35億円が代理店幹部の個人口座から投資会社を通じて、ゴーン前会長の妻キャロルが代表を務めていた会社に流出。その一部がクルーザーなどの購入に充てられていたとのことです。

25日に再度保釈。保釈の条件として、国内の決められた場所での居住、妻と会うには裁判所の許可が必要とされ、一貫して無罪を主張するゴーン前会長は猛反発。容疑の真相については今後の司法判断に委ねられますが、ルノー擁するフランス政府と日本政府の軋轢が出来してくるなど、自動車界だけでなく、日仏関係にも風雲急を告げる形になりそうです。

カルロス・ゴーンとは

生い立ちから自動車業界へ

1954年3月9日、レバノン人系ブラジル人の父、レバノン人母の元に誕生。ブラジル、レバノンへ移住したのち、フランスのパリ国立高等鉱業学校を卒業後、タイヤメーカー大手のミシュランに入社しました。入社3年でフランス国内の工場長、30歳で最高執行責任者(COO)、35歳で北米事業部の社長兼最高経営責任者(CEO)に抜擢されるなど、順調な出世街道を歩みました。

こうした業績が評価され、ルノーに上席副社長としてスカウトされます。当時赤字続きだったルノーを数年で黒字にすると、1999年3月に業績不振だった日産自動車の最高執行責任者(COO)に就任。経営不振と財政危機に陥っていた数々の自動車企業を立て直ししたことで手腕を大きく買われ、引き続きルノー、日産、三菱自動車連合の会長職を務めるなど精力的な経営を貫いていました。

倒産寸前の日産をV字回復


数あるゴーン前会長の実績の中で、特に日本人にとって鮮烈だったのは、やはり日産自動車の立て直しでしょう。1999年当時、2兆円もの有利子負債を抱えて倒産寸前だった日産に送り込まれたゴーン前会長は、村山工場や日産車体京都工場など5工場の閉鎖、2万人あまりの従業員の解雇、下請け業者を半分以下に絞るなどのコストカットを断行しました。

この情け容赦のないリストラは国内で大きなニュースになり、ゴーン前会長はバブル崩壊後の日本社会で畏怖の対象に。ただ、ゴーン前会長はリストラだけでなく、コミュニケーション改革で社員のモチベーションを上げることにも成功。倒産寸前の状態からわずか2年後には、2500億円の純利益を上げるというV字回復を成し遂げました。

ゴーン流経営の陰り

徹底した合理化で「コストカッター」の異名をとるゴーン前会長ですが、合理化を追求する余り、独裁的な経営に傾斜していきます。確かに日産のV字回復は達成しましたが、自身の権力維持に邁進するようになり、会社のお金を私物化したことで今回の逮捕に至りました。

今回の逮捕で、ゴーン前会長は世界各地に自宅を所有しており、ベイルート、リオデジャネイロの高級住宅は、日産が海外会社を通じて購入していたことが判明。また、日産がゴーン前会長の姉に、アドバイザー業務の名目で年10万ドル支出していましたが、その業務の実態はなかったと言います。

圧倒的な経営手腕の陰に隠れていた裏の側面が明るみに出たことで、ゴーン前会長の求心力は地に落ちました。

現夫人キャロルとの関係

ゴーン前会長は初婚でリタという結婚し彼女との間に1男3女を設けていますが、2016年に不倫相手だったキャロルと再婚。パリのヴェルサイユ宮殿で豪華な結婚式を挙げたことから派手好きな女性のように思われますが、現在までの報道からは伺い知ることはできません。

4月4日にゴーン前会長が再逮捕された日、家宅捜索に入った東京地検特捜部の係官からパスポートの提出を求められ、レバノンのものを渡しました。その翌日、キャロル夫人はアメリカのパスポートでパリへ出国。日産資金の一部がキャロル夫人が代表を務める会社に送金されていた経緯があり、キャロル夫人も共犯の可能性があり身の危険を察知しての行動だったと考えられます。

ルノーと日産の関係

ルノーとの資本提携

販売不振により倒産寸前だった日産は、1993年3月、ルノーの傘下に入りました。ルノーが日産の株式36.8%を取得し、日産の欧州における販売金融会社も取得する内容。日産のCEOにゴーン前会長が就任し、抜本的なリストラ、車種ラインナップやデザインの刷新などで販売台数は増加し、日産は2003年に負債を完済しました。

2016年には、日産が三菱自動車の発行済株式の34%を取得して筆頭株主となったことで、ルノー・日産アライアンスに三菱も加わりました。

経営統合問題

日産に43%を出資するルノーには議決権はありますが、日産が保有する15%のルノー株に議決権はありません。日産はルノーの実質的な子会社です。かつて国有企業だった頃の名残でルノーの大株主がフランス政府であることも影響しています。そのルノーは日産との経営統合を提案していましたが、経営の独立性を重視する日産に配慮し棚上げとなっていました。

折しも、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とルノーの経営統合計画が白紙に戻ったため、ルノーと日産の経営統合が加速するのかと思われました。しかし、ゴーンの後任として会長に就任したルノーのスナール会長と、日産の西川社長の会談は平行線。日産側の警戒がまだ強いという報道です。

日産の課題

2018年11月のゴーン前会長逮捕を受け、日産自動車の西川廣人社長は、取締役会議でゴーンを会長職から解任することを発表。この逮捕劇の背景には、内部通報により数か月間の内部調査を行ってきたことを明らかにしました。その後、川口均CSOが総理大臣官邸を訪れ、日仏関係維持のための協力を要請したとのことです。

今年5月、西川社長の続投が決定し、日産は経営体制はゴーン派が一掃された陣容に一新されました。当面は脱ゴーン体制の地固めを進めることになりますが、国内販売5位と低迷した業績の建て直し、企業規模、技術料の面で逆転状態にあるルノーとの経営統合の可否などの判断を迫られることになります。

今後の見通し

ゴーン前会長の逮捕のニュースが流れた瞬間、誰もがかつて大規模なリストラを断行した剛腕を思い浮かべたことでしょう。以来、ゴーン前会長といえば経営合理化、容赦ないリストラの象徴のような人物として記憶され、新興の起業家からは神のように崇められていました。

そうしたゴーン前会長の神話は崩れ去りました。今後、捜査が進んでいく中で全容が明らかになっていくでしょう。一方的にゴーン前会長の指示だったのか、それとも共謀者がいてゴーン前会長は欺かれたのか。世界的にも著名な経営者であり、自動車業界の重鎮でもあるだけに、これからゴーン前会長をめぐる状況がどう変わっていくのか注目したいです。