メイ首相辞任へ!イギリスのブレグジット進展はどうなる?

時事

メイ首相辞任のあらまし

経緯

イギリスのメイ首相は5月24日、EU離脱いわゆるブレグジットをめぐる混迷の責任を取って辞任すると表明しました。6月7日に保守党党首を辞任した後、7月末までには次の首相が決定する見込みです。次期首相は、EU離脱に対しメイ氏より強硬な路線をとる公算が大きいため、EUとの軋轢がさらに増すと指摘されています。

メイ首相の有力な後任候補と目されているのは、ボリス・ジョンソン前外相。条件などで合意がないままEUから離脱する用意を整えておく必要性を訴えています。また、最大野党の労働党からは、イギリスの将来を決定する選択肢を再考するため総選挙を行うべきだとしています。

しかし、EU側は離脱協定の再交渉はないと表明しており、誰が次期首相になっても混乱が予想されます。離脱期限は10月31日で、それまでにEU各国と離脱合意を結べなければ、合意なき離脱に直面するリスクがあります。

原因

涙ながらに辞任表明したメイ首相。一体、彼女にどんな困難が立ち塞がったのか。メイ首相はもともとブレグジットに消極的な親EU派だったのですが、ブレグジット実現のために舵を取り始めました。しかし、円満な離脱に必要な離脱協定案の下院可決には3度も失敗。

2018年11月、アイルランドの国境問題が解決するまでイギリス全体をEU関税同盟に残すとした協定案でEUと合意しますが、完全な離脱を求める保守党の強硬離脱派に強く反発されました。メイ首相は「合意なき離脱」の可能性をちらつかせて事態の収拾を図りますが裏目に出てしまいました。

最終的に、協定案が可決すれば辞任すると表明することで、ようやく党内の強硬離脱派の多くが賛成に回りました。離脱、残留派が二分するイギリスで誰もが納得のいく離脱を実現するのは困難ですが、味方も後ろ盾も少ないメイ首相自身の政治手腕が影を落としたという見方もあります。

ブレグジットとは

概要

イギリス(Britain)のEUからの離脱(Exit)から生まれた造語。2016年6月に行われた国民投票の結果、51.9%の国民が賛成したことで離脱が決定し、2017年3月にメイ首相がEUに対して正式に離脱意思を通告しました。当初2019年3月に離脱することになっていましたが、実現には至っていません。

EU(欧州連合)とは

EC(欧州共同体)を母体とし、1993年11月、外交・安全保障政策の共通化と通貨統合の実現を目的として設立されました。域内の多くの国で出入国や税関の審査が廃止され、人やモノが自由に移動できます。旅行者にとっては、パスポートなしで域内を行き来できるようになったことが目に見える変化だと思います。

もうひとつ大きな制度とした誕生したのが、単一通貨ユーロ。現在、欧州25か国(そのうち19か国がEU加盟国)で使用され、アメリカドルに次ぐ基軸通貨となっています。しかし、ドイツやフランスなど強い通貨を持っていた国と、相対的に弱い通貨の国が混在していることから、2008年のギリシャ財政危機を生み出すという弊害も露見しました。

イギリスの立場

当初からヨーロッパ統合に消極的だったイギリス。伝統的に保守傾向にあり、大陸ヨーロッパ諸国との間には温度差がありました。ちなみに、ユーロ不参加はこの流れとはまた別軸で、ジョージ・ソロス氏による多額のポンド売りにより、参加基準を満たせなくなったからです。

そんな中、2013年1月にキャメロン首相が、総選挙で勝利したらEU残留をめぐる国民投票を行うと公約。当時、移民問題やユーロ危機などでEUに対する信頼が低下していたため離脱への機運が高まります。そして、2016年6月に実施された国民投票で離脱派が僅差で勝利。キャメロン首相は辞任し、離脱事業は後任のメイ首相が引き継ぎました。

イギリスのEU離脱是非を問う国民投票

経緯

EU離脱を問う国民投票を公約に掲げたキャメロン首相はもともと残留派。1期目は連立政権だったため、次期総選挙で保守党の単独政権を実現するべく、国民投票を選挙戦略に利用するという腹でした。キャメロン首相としては、移民など国内問題のガス抜きという意味合いでしたが、離脱派が勝利します。

影響

歴史的にヨーロッパを主導してきた国であり、EUの代表的な国でもあるイギリスが離脱することのインパクトは計り知れません。それだけに、市場は敏感に反応し、国民投票の結果を受けて、3割ほどポンド安が進みました。巨大な株式市場のあるロンドン(シティ)から金融機関が移ってしまうのではないかという懸念も強いです。

離脱延期

国民投票後に就任したメイ首相は、2017年3月末までにEUを離脱すると通告。しかし、離脱協定が議会で承認されず、3月29日の離脱日の採決でも否決されてしまいました。EUは離脱期限を10月31日としましたが、それを越えてしまうと合意なき離脱もあり得ますが、離脱撤回という選択肢も考えられます。

今後の見通し

メイ首相辞任劇は、単に政治家としての限界というより、ブレグジットという事業がいかに困難なものかということを如実に物語っています。すでに国内ではEU残留派が離脱派を上回っているという見方や、2度目の国民投票を求める声が広がるなど、当時とは様相が異なってきているのです。

俄然メイ首相の後任となる人物に注目が集まります。しかし、最右翼と目されるジョンソン前外相にしても、議会からの承認を得るだけでなく、EUからより有利な条件を引き出すことも難しそうで、合意なき離脱が現実となってしまう可能性も高いです。

10月31日の離脱期限まで目が離せません。